建設クイズ「鉄筋が錆びるとどうなるか」

この写真は、都内某所で見かけた鉄筋コンクリート造の古い壁です。
鉄筋が錆(さ)びるとこうなります。
どうしてこうなるのか、順を追って解説していきます。

鉄筋コンクリート造の建物は、圧縮力(つぶす力)に強いコンクリートと、引っ張り力に強い鉄筋、それぞれのこの特徴を活かし、その両者を一体化することにより、柱・梁(はり)・床・壁が、圧縮力にも引っ張り力にも更には曲げる力にも耐えられるようになっています。

しかし、建物は完成して人々が使用する段階になると、コンクリート表面は部位により目視できますが、鉄筋はコンクリート内部にありますので見ることができません。

次の写真は、タワーマンションの新築工事の現場の様子です。

丁度、躯体(くたい)工事(建物の骨組みを造る工事)の最中です。
鉄筋コンクリート造の柱の鉄筋、型枠(かたわく:コンクリートを形づくるための枠のこと)の工事状況が解ると思います。

次の写真は、生コン車とポンプ車です。

生コンクリート(まだ固まっていない軟らかいコンクリート)を生コン工場から現場まで運搬する生コン車(写真ピンク色)は、皆さんも公道で見かけることもあるでしょう。
赤い重機は、ポンプ車です。生コン車からポンプ車に流し込まれた生コンクリートは、ホース(通常は直径100mm)の中をポンプで圧送されて、コンクリートを打設する部位に放出されます。

次の写真は、現場の実際にコンクリートを放出する部位に、ポンプ車の筒先(ホースの先端)を持って行って、コンクリートの打設作業をしているところです。

ポンプの筒先を操る圧送工(あっそうこう)・コンクリートに振動を与える土工・コンクリート表面を平らに均す左官工・鉄筋の乱れを治す鉄筋工・その他、色々な職人さん達が作業しています。

ここまで見てきたように、現場では、様々な職種のプロフェッショナルがそれぞれの仕事を遂行していきます。そして、鉄筋コンクリート造の建物が出来上がっていきます。

ここで最初の写真に戻ります(鉄筋がよく見えるように拡大しています)

建設当時はおそらく綺麗だったはずのコンクリート表面が、この写真の状態になるメカニズムは次のようになります。

  1. 鉄筋は錆びると膨張します。
  2. その膨張する力が、表面のコンクリートを外に押し出し、コンクリートにクラック(ひび割れ)を生じさせます。
  3. そこから雨水が侵入し、更に鉄筋の錆を増進させ、外壁を錆色の(茶色い)シミで汚すこともあります。
  4. そして、錆で膨張を続ける鉄筋が、ついには表面のコンクリートを剥落(はくらく)させます。※写真参照

※写真の現場は更なる錆の増進を食い止めるために、鉄筋にグレーのエポキシ系錆止め塗装を施しているようです。

コンクリートは、アルカリ性です。このアルカリ性のコンクリートが鉄筋を保護している限り、鉄筋は錆びません。しかし、アルカリ性のコンクリートは、空気中の二酸化炭素によって、表面から徐々に中性化(アルカリ性でなくなっていくこと)が進みます。そして、コンクリートの中にある鉄筋の周囲まで中性化が進むと鉄筋は錆びます。

したがって、鉄筋からコンクリート表面までの距離の確保が重要です。何故なら、鉄筋からコンクリート表面までの距離が大きければ大きいほど、鉄筋の周囲までコンクリートが中性化するまでの時間が何十年もかかるようになるからです。
この時間が鉄筋コンクリート造の寿命とも言えます。
勿論、各種処置を講ずることにより寿命を延ばすことは可能です。

この鉄筋からコンクリート表面までの距離のことを【かぶり厚さ】と言います。
このコンクリート壁のかぶり厚さは、写真で見る限り、1cm未満しか確保されていないように見えます。この数値は、明らかに建築基準法で規定されているものより小さいものとなってしまっています。
そのことが鉄筋を錆びさせます。鉄筋コンクリート造の構造物の耐久性の観点から、このかぶり厚さの重要性がこの写真から良く解ると思います。

 今回の建設クイズは、かぶり厚さの規定に関するクイズです。

 

【第1問】建築基準法では、柱のかぶり厚さは、何cm以上と規定されているでしょうか。


① 1cm
② 3cm
③ 7cm
④ 10cm

 

 

 

 

 

解答


第1問:② 3cm

法令では鉄筋のかぶり厚さについて次のように記されています。

建築基準法施行令 第七十九条

鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあっては2cm以上、耐力壁、柱又ははりにあっては3cm以上、直接土に接する壁、柱、床もしくははり又は布基礎の立ち上り部分にあっては4cm以上、基礎(布基礎の立ち上り部分を除く)にあっては捨コンクリートの部分を除いて6cm以上としなければならない。

注:実際の建築現場では、その建物の設計図書の中で、建築基準法より大きなかぶり厚さの数値が規定されている場合もあります。

この規定のかぶり厚さを確保するために現場で具体的に取っている対策は、スペーサーを鉄筋に取り付けることです。下は柱の鉄筋の写真です。白いドーナツ状のリングが取り付けられています。これが、スペーサーです。

柱の鉄筋の組み立てが終わると、次に柱の型枠を組み立てますが、型枠と鉄筋の間にこのリングの半径分のスペースが強制的に確保され、コンクリート打設後にはこのスペースがかぶり厚さとなります。

安心・安全なものを造るために大切なことのひとつを紹介しました。

<弘>

 

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